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    久方ぶりに書けたもの。

    【虚金の水妖】

     蛇は藪をすり抜けて、まずは青竹色に濡れて額に貼りついた髪を払って頭を振る。少し癖のある髪は、水気をはなし、空気を抱きこんでふわりと落ち着く。露が零れてしまった外套をはたいた。厚い白地には所々、紫水玉を抱えた黄銅の飾りが取りつけられている。よく磨かれた表面は久方ぶりに陽射しを浴びて、黄金のような輝きを返した。
     偽の黄金がこの蛇である。丹念に磨きこまれて、腐食のひとつも見えぬのが、人の象を保っている蛇である。それでいて、すいと立ったところに微かな脱力を加えた姿に日毎の仕事を感じさせぬのも、この蛇である。決して至宝たり得ぬ凡庸さに凡愚ゆえの魅力を足し合わせた蛇体がなんと燦然と輝くことか。
     彼は輝けど蛇である。如何様ともせざる蛇である。昔のなまえを池に沈めた、叶わぬ願いの蛇であった。鳥と並ぶにはあまりに弱い。なれど鳥の背後に立ち、あるいは軍馬に跨がり並走する。その有り様はやはり如何にも煌やかで、生前の彼を知る者ならばきっと目を疑うろう。
     蛇と化してより力を増した皮肉を噛みしめ、槍で彼は藪を払った。
     枯れた竹は切り裂かれて道を譲った。

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