言葉ってなんて人を魅せるのでしょう。
技術書を買うつもりで立ち寄った本屋を出た時には、日本秘密結社な料理本と文庫本をビニル袋にぶら下げていました。あら組み込みシステムは? だなんて言わないで下さいね。技術書の棚の前で悩むこと15分。流し見ていた文庫の島で脊髄反射して、放送テキストを取ってレジに並ぶのにはたった2分。ほら、目的を果たそうと努力した影がありましょう?
以前にも「孤島パズル」で「海の底」で「封神演義」でそれからたくさんの漫画、買ったばかりの本でこうしてしまったのですが、今日も「スペース」に捕まって一時間、二時間、日付が変わっても何度も何度も読んでしまっていました。頭では、お風呂に入らなくては、お米の準備を、明日のごはんは、読み出したら全部忘れるから、と必死に警鐘をならすのです。けれど――シャワーだけなら直ぐさ、パンがあるじゃない、コンビニ弁当って知っているか、この活字に逆らえるかい、と理性が理性的に押し潰されてしまいます。
何度この失敗をしたでしょう。会社に遅刻したとき? 帰りの電車が知らない場所についていたとき? 友人と会っているのに鞄の中の本の気配に注意を奪われているとき? 受験用の単語帳? 塾の応用テキスト? 朝の新聞? 夕飯に降りずに叱られたとか? 気がついたら朝? それとも夜? 電気を落としたあと、夜の薄闇で読みふけった絵本の記憶?
そのすべてが初読ではなかったのに。
言葉の記された姿と言うのは、なんと。
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