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    百花

     気がつけば黍野が「寄っただけ、中間試験が」と言い捨てて去った日から結構経った。今日は珍しく午前中に訪ねてきて、座るなり「しまった今回ので推薦の成績決まるのに」と頭を抱えた。
    「おやすみ……」
    「って紫苑、昼御飯は!」


     うたた寝の国から戻ってくると、黍野がテーブルの向こうにある脚つきソファに突っ伏していた。
    「何、してんの……」
     白い半袖のシャツから伸びた腕がクッションを抱えこんでいる。布が引っ張られていて二分袖の境界が見えた。
     日を遮った制服の跡だけだろうかと思っていたが、一級下の少女にはまだ体育の授業があるらしい。ゴールテープもどきを切って倒れこんだ周回遅れのマラソン練習、スリーポイントラインをちょっと越えてたシュート、どこもかしこもツッコミどころだらけの他愛ない時間だった。
     一年の差である彼女の現在を懐かしいと思い、紫苑は立ちあがる。たくさん眠ってしまったから何やら動きたくなったのだ。
     客間から庭に続く

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