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【ひさえ】
「スイナはどこ?」
始めに望まれた同胞に、未だ望まれていない同胞の在所を聞く。
主の願いに秀でて叶える、硝子質の煌めき。似た色を帯びたものは数多あるが、彼とは違い皆油のように滑らかだった。
秀でて、彼のみが色を異にする。
「陽叶さまの許にはおりませんよ」
「知ってる、馬鹿」
ひさえは主から与えられた音の許に、秀でた彼より澄んでいる。澄んでいるか、滑らかか、評価はそんなものだけでは決まらないけれど、より澄んだ者としては多少、強く出たっていいではないか。
「けれど……いつものように、置かれているわけでもありません」
「は?」
スイナは動けない。望まれていない彼女は、動くことが能わなかった。望まれていないからには何もできない。
名をひさえと彼が知っていることも異例。真名であるから。
選ばれないまま長くあるのもまた異例。使われるべき物だから。
そもそも、この三人が異例だった。樹液から生じたのだから。
「だから解らない――陽叶さまが解りません。望みに和する彼女が何を叶えるのか、私には」
翠和の字に何をかけるのかは、と彼はため息をついた。
「まほろ?」
ひさえが呼ぶと、
「私の名はあの人のものです――呼ばないで」
「悪かった。悪かったよ。怒るな。――で、解らない君はどうするのさ」
確かに僕だって、ひさえ、と彼が呼んだら怒り狂うだろう。軽く手を挙げて怒りを遮り、ひさえは片目を閉じた。
「なにも。ええ、多分――主に成り代わり、護界にいることになるでしょうから、関わりようがなくなる、としか」
「降りるの?」
「主が望みましたれば」
「淋しくなるな、僕のきょうだい」
「されど、また伴鳴る日も訪ないましょう」
「落花が枝に帰るとでも?」
「できなければ胡蝶に変じて」
「いいね――きみの主は落としっぱなしにしない人だからね。またここで奏でることもできるだろ?」
「きっと。……いえ、もしやすると、あなたがわたしのところまでお越しになる日も来るかも知れませんね。あなたの主は心優しく、気まぐれな方だから」
「は、このまま惚気合いでもするかい?」
「ご冗談。スイナに会いに行くのでしょう?」
「ああ――そうだった」
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「ひさえ」と「まほろ」。
創作の初期段階です。
とりあえず会話文を書くだけ書く。
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