こばなし
…………………………
【Pon,T-A】
「ぽんた!」
少し太めのしっかりした髪をほぐすように撫でてやると、本来あり得ない鳴き声を返された。まっすぐ落ちるぽんた色の毛の右耳の後ろらへんをかいてやった時だった。
「にゃん」
「ぽんた」
ちょっと落ち着いてもう一度。
「にゃんにゃー」
「……ぽんた」
膝の上に乗っかった頭の天辺を左手でぺしっと叩く。
「なんでございますか、主様。キラルになんぞ用でもありましょか」
うとうとまどろんでいた狸っぽい子どもっぽい者が片目だけ開ける。
「にゃん。いつからそんな機能を搭載したんだい?」
「それがですね、主様。聞くだに不思議、語るに不可思議、話せばながあくなることながら、じゅげむじゅげ」
右手のかわほりでぱしこん、と打つ。
「痛うございますですよぉ」
「連想だけで喋るんじゃないよ」
「いやまさかそんな、主様相手に限りましてそのようなことをキラルが、ねえ、まさか。いたしますに決まっとりましょうが」
「ほんと、ほんとにいい性格してるよね、うちの家人」
「主様ですからね」
「あんまりすぎると話が戻らないじゃないか。にゃんの秘密は?」
「日向ぼっこスペサルバッチが適用されたんですよ」
「うん、そうなの。耳かきしてやんない。今すぐ膝からどくといいと思うよ、キラル」
「ほんとなのに!」
「そういう信仰ないでしょ、おやつ抜き!」
「ほんとなのにっ」
「じゃあどこの影響受けたか答えてごらん」
「えへー」
「夕飯も抜きにするからね」
「主様を和ませたげるつもりでしたのに」

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