…………………………
いいや。
「僕はまだ生まれてもいないから」
生まれてないが故に幻想。
生まれてないが故に伝承。
「……西の帝皇になりに行く。東は今、結末を迎えたんだ。だから、もう次の物語に移らなくては。次の伝説を消化しなくては、ね?」
鍛冶師は胡乱げに常磐木を見つめる。その白琳の右手を。カイカノン統一紋――「未だ発生していない」紋様が刻まれた手の甲を見つめる。
「みや。……本当に、もうすぐ、僕が生まれて。そのあと僕がこういう外見になったときに、僕はここを去るだろう」
去るだろう。
生まれる前は神だった、と伝えられることになる帝皇は笑った。
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