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【死合い/しあい】
さて、死合おうか、と鳥の王がやや多めに間合いをとった。構える。猛禽類を借りて顕現したに相応しく、少女の覇気はすさまじい。王たるべくして生を受けた者、特有の器だ。魔力は起源から引っ張ってきている。記録も彼女に勝る者はいはしない。人になったもの故に、かつて地上最強を謳歌した王。
して、刃もまた強かった。今の聖の知るところではないが、名薙刃と呼ばれた名刃である。彼女の手に渡ってから羽の字に変えられたが。名薙羽は核を有している。意思疎通はできないが、可変型。その核は、錬鉄の職人による一点ものである。
名薙羽の名は「名を薙ぎ祓う刃」――つまりは「存在を薙ぎ祓う刃」――薙ぎ祓い、完全消滅させる武具。
「運命如きの名で、我が前に立つな」
鳴海聖を見据え、鳥の王が唸る。そして、跳躍。刃は今、刀の形。小柄な剣士にあわせ、やや短いものの、闇すら照り返す鋭利さを持っている。
応じるは藍色の羅布。聖の背から羽の如くして、生えている。受け流すように広がって、刃の名前も流していく。
「流さず、戦え。おぬしはおぬしの王ぞ」
立ち向かうことは、彼女に牙を剥くことは、とても……怖いけど。鳴海聖は自身から自身へ牙を剥く。それがすなわち、彼女と相対すること、彼女に斬りかかることになる。
「……いやです、王」
「これは異な事。このままついえるか、鏡の子」
その名を丸ごと、ついえさせるか――? 鳥の王は、名殺す言葉を鍛え上げた刃を突きつける。
「あなたの敵になるのはいやです」
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