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多分、僕はいつもこっち側にいるんだ。それは漠然ながら予感していることだった。生涯、あの道に進むことはない。ほとんど傾いた日の中、僕は――いつもここにいる。
「ばみとんとん部、あつまーれ」
眠そうで気合いのない声の招集に応えて、部室の入り口に走っていった。見渡して確認する本日の総勢五名、総部員数は四十名を超えているのだが、いかんせん堕落部なのであった。
呼称も部員によりまちまちで、二号さん、フリーダム、俺の城、ロッカー利用、ばみとんとんあたりが代表例か。バトミントン部です先輩方、というツッコミを入れるのもいい加減飽きていた。言い続けているうちに進級を経験し、自身も役職持ちになっている。いつまで経っても一向に聞き入れないのだ、諸先輩方は。
「今日はなんですか、先輩。というか僕着がえたいんでドア前を陣取らないでください」
「風強いから、ばみとんとんできないから、気にすんな」
はあ、それで先輩コート着たままですか、と右腕にかけていたコートを羽織った。一度脱いでしまったコートはもう冷たくなっていて、ナイロンの裏地に触れた指がぴりり、と震える。
ひゃっこい。
「うん、うっかり通達忘れていたんだ。こんな日もあるよね。あのね、今日は強制帰宅日ですーあと十五分で校門が閉まりますー」
てへへーと気の抜けた笑みを浮かべて腕時計を示した。この人はほんといつも突拍子のない……! そのくせ通達のために自分もギリギリまで居残るから怒れもしない。
「いやぁ、風がなくてもできなかったねー、失敬失敬」
マフラーの端で顔を仰いでいる。ここから校門まで片道十分、自転車置き場を経由するときっかり十五分、何をふざけてんですかあんたは、くらい言ってもいいだろうか。
「というわけでさっさと帰りましょう皆々様」
「ヒズ先輩!」
「昼休みに言えよ鳴海……っ」
「や、だからこんな日もあるって話。急ごうね、はい解散」
全員の肩をせかすように叩く、にっこりにんまりした先輩は部室の鍵とノートをもうかたっぽの手にじて僕らを見送った。あれれ、あの人も自転車ユーザーじゃなかったっけか。
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