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【ヒズ朝SS断片】
≪前略≫
「やっぱり、朝はアレかな? クロワッサンに紅茶でもつけるかい?」
「冗談」
「勿論さ。冗談だよ、冗談。ちょっとおまえを苛めたくなっただけ」
かみ合ってきた。何とか応答をできるくらいには、互いの声に耳を傾けられている。目覚めの一歩。このまま、当たり前の会話にもって行けたら極上、起床予定時刻まで五分も余裕がある。
「しかし、君。このまま無為に折り重なっていても、腹はふくれない。和食を頼む」
「オレはおまえに尽くす気なんて、毛頭ないんだけど」
「僕に作れと。いい度胸だ、キッチン修繕費を用意して待っていろ」
と、女は呵々と笑う。短い髪がシーツの上で跳ねていた。寝癖を指摘してやろうか、とひと束手に取った。
短さ故にまとまらない、とうに諦めた、放っておけ、と男の自分よりも男前にのたまう。
≪後略≫
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