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    三十二年ぶりに

     取りあえずの目的は、そうだね、三十二年ぶりに君に会いにでも行こうか――。
     ゆるゆると起きあがって、まず浮かんだ言葉に驚いた。そんなに時は経っていたろうか、懐かしく思うほど僕の。
     そう、三十二年ぶりに君に会いにでも行こう。ガラスの海に沈んだ光がきらきら瞬く風景みたいに遠く慕わしい、君に。

     同居人の幼い寝顔に瞼を伏せ、行ってくるよとささやいた。こどもの時間を一足飛びに駆け抜けてそろそろ大人にさしかかる同居人だが、眠るときばかりは時を戻してまるくなる。
     幼くいさせてやれる時間が短かった。
     それを僕が悔やむのは違うと知っているけれど。
    「ちゃんと起きるんだよ、伊月」
     深い眠りで安らいで、君にしかできないやさしい嘘をつくといい。罪悪感は夢に捨てて、友人に幸せをあげるといい。
     そう思える自分に驚いて――今朝はどうかしている、とちいさくちいさく息を吐いた。
     いい朝だ。冷たすぎて震えが走る。いい朝だ。僕はきっちりここにいて、しっかり生きている。白い息に粟立つ肌、僕がかすかに指を動かそうとするとワンテンポ遅れてついてくる身体、どれも僕にはすばらしい娯楽。同居人の面倒を見るのも、これから君に会いに行くのもそのひとつ。
     さあ、君と別れたガラスの海に――この光を捧げに行こうか。
     夜の白さが残る空気の中を四本の足で歩いてみる。寒さの風は銀の毛皮で遮断して、アスファルトを軽く蹴る。
     ――人を模してみようか。

     同居人と関わるようになってから思い出しはじめた感覚が、今日も頭をもたげてくる。素直に従って形を変えた。
     そこら辺の空間から琥珀色の砂糖粒が入った瓶を取り出して、少しすくって舌に乗せる。甘やかさに酔いながら、ふらふら目的地への道を歩いた。

    …………………………

     楓はシルバーメイプルなので。この木からも、あのあまい樹液がとれます。

     「三十二年ぶりに」がちゃんと使えてすごく嬉しいというか!
     大丈夫! 繋がってる! 今のところ、私の中では。
     男の人一人称「僕」を久しぶりに使った気がします。
     たぶん、これに何か追加して、htmlにすると思われます。

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