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    白琳の王冠、こきくるおもかげぱらりぱらり

    白琳でしょかんなど。
    ……………………………………………………
     主様。こうして書にしたためるのも躊躇われるのですが、何かせずにはいられませんので、筆をとった次第です。
     健やかにお過ごしでしょうか。
     お申し付けの通り、朝夕の水やりと、昼夜の記録をつけておりますので、あの花につきましてはご心配召されぬよう。
     書物は先日、空気がからりとしておりましたから、虫干しをいたしました。御衣装にも風を通し、傷みがないか確かめましたし、防虫剤を新しいものに替えましたので、少々薬の匂いが移ったほかは以前のままお戻りを待てるかと思います。薄硝子の器は危ないので紙にくるんで仕舞っておきましょう。銀器と塗りの椀については、いつもの布でよくぬぐってあります。お酒は封をしたまま眠らせてやりましたから、きっと美味しくなっておりましょう。
     色々と片付けをしておりますと、どの品からも主様のお声がするように思われます。
     屋敷の品々は主様の気配を湛えておるのが慰めに似て、されども主様のご不在を思い知らせて、物淋しさを招きます。
     不安を言い出すことは憚られて、そっと墨に染みこませることにいたしました。
     お早いお帰りを待っております。
     どうぞ息災で。
    …………………………
     主様。花の咲く頃となりました。変わらずお元気でいらっしゃいましょうか。
     嬉しいお知らせがございます。わたくしの兄弟が訪ねてきてくれました。ただ、急ぎの用事でもあったのか、一刻ほど語り合った所で帰ってしまい、充分にもてなすことができなかった点だけは残念に思います。
     主様。あのこは朗吟を聞きたくなるような、たいそう美しい声をしております。お帰りになりましたら呼び寄せて、楽を愛でてはいかがでしょう。
     日毎の言葉はつきませんが、ひとまず手を休めることにいたしましょう。
     ご無事をお祈り申し上げます。
    …………………………
     主様。雪がちらほらと舞い始めましたが、つつがなくていらっしゃいましょうか。
     あの八雲の日から十年が過ぎ去りました。庭木は今も四季にしたがって芽吹いては木の葉を散らしております。
     このようによく染み透る夜には、主様が好んでいらした歌を口ずさみます。今宵はこれにもたれて過ごしましょう。
     帰り来られる夜を待ち望んでおります。
    …………………………
     主様。夏の嵐が過ぎて行きました。主様のおわす方へ飛び去っておらぬとよいのですが、案じられてなりません。
     一日でも早く、ご無事なお姿を拝させてくださいませ。
     今日、黄金に輝く羽蛇が殻を脱いで行きました。脱け殻は小さく切り刻まれて運ばれましたが、当の蛇は助かったのか、先を知らぬ不明なわたくしですので、心寄せるしかのうございました。
     盃が退屈と申しておりますから、近々、菊の宴を催しませんか。
    …………………………
     主様。あれからどれ程時を経たのでしょう。久方ぶりに方々の市を訪ね、主様の行方を尋ね歩いて参りました。水の都に鳥の島、変わり蜥蜴の煉瓦の軒、聞けども主様の影はなく、名も存じ上げませぬと口々に語るのです。
     主様。何処におわしますか。声は届いておりますか。
     主様を探し歩くわたくしの姿と名前は覚えたましたよと皆は口にするのですが。
     どうにもままならぬ日々を数えすぎたように思えて参りました。
     恨み言が過ぎるので筆をおきましょう。
    …………………………
     主様。雨がなかなかやまず、夜天の輝きが懐かしく思われます。わたくしを支えてくれるものも少しおります。心細さばかり書きつけてしまっておりますが、ご心痛のほどではございません。
     幾度となく、彼等と話してはまだ慣れない呼び名に戸惑います。やはりお出かけになった日にくだされたものより、以前の方がわたくし好みにございますから、せっかくいただいたものですのに大変失礼で申し訳のう存じますが、お帰りの暁には、先どおりに呼びつけてくださいませ。
     主様。慣れぬ日々に慣らされていく心地がしてなりません。
     主様のご無事を祈念申し上げるとともに、ご帰還をひたすらに請い願っております。
    …………………………
     主様。また十年が行き去りました。主様に代わって屋敷におりますが、最近は鳥の他におとなう人も少なく、もっぱら庭石を動かしたり、木の剪定をしたりの日々が続いております。
     蚕から糸を得るのもだんだんとうまくなって参りました。よい藍で染めましたので、お帰りまでに反物にしておいて、すぐにお仕立てできるようにいたしましょう。
     このところ、白うさぎが健やかそうに眠っています。起きてくれれば遊び相手になってくれましょうが、いけませんね。せっかくすいた紙を破ってしまうかも分かりません。
     日が登り始めましたから、ここまでといたします。
    …………………………

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    白琳の王冠、あさひいろなはるひさし

    「おはよう、琳音」
    「おはよう、りおん」
    「やっぱ遠いな」
    「でも昨日はずいぶん歩いたから、きっと近づいているさ」
    「そうだといいが。どうしたってな。アリエスと同じルートでいくとかアホだろ、おまえ」
    「悪いね。馬鹿だなとは自分でも思うよ。でも、大切にしたいじゃないか。僕の約束に会いに行くのだもの」
    「たく、しかたねえなあ。いいぜ、そこまでつきあったるよ」

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    白琳の王冠、あさひいろにつきこもる

     風か吹き抜けた。水の上を通りすぎてきたそれは、どことなく月光じみた冷ややかさを帯びていた。開け放した障子を叩き、とんととんと時を告げる。屋敷の主の、肩口で切り揃えられた絹糸のような髪を少し絡ませて、はたと止んだ。
    「終わった――」
     縁側に腰かけていた主が静寂を取り戻した庭に向かって呟いた。西瓜をしゃくりと食んで、甘くとかして飲み下す。
    「手を出した甲斐があったね。やっと終わったようだよ、都」
     主は振り向かず、声を庭に投げる。都は、湯飲みをおろして横にどけ、見慣れてしまった後ろ姿に近づこうと膝をすって縁に寄った。屋敷の主は、西瓜をもうひと切れつまみ、さく、と噛む。それにあわせて、床の間の花が一輪落ちた。
    「凪が破られた――君が打った刃のおかげだね。ありがとう、都。君で本当によかった」
     高木、低木はそれぞれに枝葉を伸ばしている。最近になってぐっと伸びた気がしないでもない。力強い幹は下方、根に至って草花に囲まれ、さらに広がる苔は水気を多く含んでいて、爽快さはあるのだが、なんとなくしんみりとした庭を主はずっと眺めている。
    「嬉しくなさそうに感謝されたら誉め言葉に聞こえないわ。せめて、最低限、私を見て言いなさいよ。いつものことだけど」
    「それは少々怖い。ご勘弁願ったまま去るしかないかな」
    「去る……って」
    「60年後にでもまた会おう。僕は長生きするつもりだからね」
    「ちょいまて意味がわからない」
    「そのままさ。僕は60年ばかりをかけて、僕が西瓜を振る舞ったすべてのひとの墓をもうでて、最後に君の墓標に花をかけるだろう。僕は君を知るだろう。書庫の中から、旅人の歌から、過去の名工の足跡を探って」
     屋敷の中が変容していく。キラルとキルアが騒ぐ山頂、濁流の淵に立つのはカナナリ、木が絡まる巨大な十字架は榊の在処、夕べの花畑に佇むティア、豪奢な洋館に月のセレネが明かりを灯す。半分までのカササギの橋、逆さまの木で遊ぶ猫、糸車を高速回転させる三姉妹、白い闇の中から引く手が数多に、砂時計を数える誰かが低く笑っている。次々に切り替わり、そのどれでもなく――川の上にある屋敷にまたなったかと思うと。
    「彼と同じものになるまいと願いすごしてきた僕だもの。さ、刻限だ。やっと生まれるから――さよなら」
     明かり障子と西瓜はどこかに。御簾と几帳で区切られた板の間の上に一畳敷かれていて。
     涼やかな青年はどこを探しても見当たらず、変若の酒を湛えた盃に映る、久冴えた月影が残った。

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    こねこねた

    おれのカレンダーは八月で止まっている。

    そろそろ、家に帰る気にならないかな、と唐突に言う。昼御飯の塩梅がどうとかの話に急に混ぜてきたから大半を聞き流していて、思わずもう一度言わせてしまった。

    幸せが一粒二粒、三粒四粒以下省略。幸せの量が一杯になってしまった。もったいないからカンスト後の値も隠し変数で持っていてくれないかしら。

    行く末を知るの、は。上下に激しく跳ねる郵便馬車に詰め込まれた封筒。寒波よりもはやく吹き降りて、開花前線より鮮やかにかけ上がる。所々パリパリになった紙の上、滲むインクの筆致が歌うたいのおにいさんの歌を歌う。二度とピアノでは鳴らない、楽しげな歌を歌う。

    白くきれいな王冠、は。
    紅い月の涙雨を知っている。旅人は五十年の昔を弾きあらわして声ひとつなく物語った。この音は鏡を割った矢の、この連なりは長柄のひと薙ぎ、こちらの低音は邸にある人の悔悟のうめき、ピチカートは泣き方を忘れたウサギの涙雨。遠い遠いあなたの音と色づかせて奏であげる。知っていますとも、覚えてますとも、忘れませんとも。古譜をなぞり続けていきますよと、旅人は真後ろに立つもうひとりの旅人に微笑みかけた。

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    こねた

    「なあ、アマーリア。これは何だ?」
    「花びら乾燥させると薬になる」
    「じゃあ根は要らないんじゃないか?」
    「根っこは乾燥させると毒になる」
    「要らないだろう?」
    「だから要るのよ」



    「こんばんは、アマーリア」
    「いらっしゃい、テラデーリャ」
    「ご飯ナニ?」
    「こんばんはの次がそれってどうなの。主食がつきた?」
    「一週間出かけたら全部とられてた」
    「御愁傷様。薬物しかないわよ」
    「わーいえいようばんざーい」



    「あらテラデーリャ。珍しいわね」
    「そ、だから仕事」
    「怖いわねぇ」
    「国外逃げるか、お縄につくかしてくんねえか」
    「そこまでは予測してなかったわ」
    「これお仕事」
    「そうだったわね」
    「今後の身の振り方を三択で選べよ」
    「もうふたつくらい増えるのが予測なんだけど」
    「なぜ」
    「うぬぼれてるのよ、こう見えても」



    「俺はこっちを行くだろう」
    「私はどうあっても行く気はないわ」
    「ああ。それじゃあ、さようならだ」
    「これっきりね。できるなら」
    「できる。そうつとめる行き先だ」
    (もしもがあったら、もう一度、枝でも投げてみましょうか)

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    Temp : 格納

    どんな手を使ってもやり遂げる。嫌われたって構わない。今日も明日も明後日も僕は生きていたいんです。

    どうかこの手のなかのひとだけでも。他にはなにも要りませんから。

    わたくしはあの人とは違います。望むものだけ守り抜き、抱えてきっと慈しみましょう。

    私がお前を負おう。

    おとなしく滅びなさい。あがく気力も果てたなら、骨の髄すら落ちたなら。

    何で投げ出してしまったの! 僕は諦めないよっ。君が降りたって、やるべきことは決まったんだから。

    ねえあの時、死んだのは誰。

    お前の心をお前に返そう。

    ぴりぴりぴりぴりキミをさく。

    ああほんとムカつく。なんかムカつく。携帯使うな迷惑だろが!

    とりあえず叫んじゃえ。そっからでいいんじゃない?

    君が納得したとして、僕らが了承するとは決まっていなかったのではないかな。

    電話に出てよ。電話をしてよ。
    お前にわかってほしかった。

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    秋の証と夏のゆきさき

    ケンタウロス
    濡れた金属
    台所で見かけたコオロギ
    せせらぎ混じりのむしのこえ
    遮断機の明滅に露を降らせて。

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    記憶をどうぞ消してください

    【記憶をどうぞ消してください】

     記憶をどうぞ消してください。記憶の底で、目先の未来で、愛したことさえたまには捨てされるように。
     十日ごとに捨ててください。もしかしたら代わる代わる出かけることもできたきょうだいの名前を数えぬように。
     枝葉も総て払ってください。梢が射落とされた九羽の烏の名前をひとつも歌わないように。
     温かな泉を枯らしてください。体と心が休まないように。
     そうして私を歩かせてください。射残された私が、昔日を思い出さないように。
     たらればの期待を潰してください。ともに空をかけると長い続け、叶わず落ちたように。
     きょうだいの記憶をどうぞ、消してください。東の小梢から西の空の果てへ毎日毎日飛び続ける、ひとりきりの名前に慣れるように。

    …………………………
     射落とされた太陽。
     なんかまた、みずのとちゃんフィーバーがきたんだー。ああ、三人がかりで講義中に膨らませた話です。
     ・10の太陽の兄弟が仲良くいっぺんに空に昇るので地上は旱である
     ・十干のことだと面白いよねとか何とか聞いてスイッチオン。
     ・交代制でのぼってはどうかと提案されるも、末妹をひとりにさせられるか! とお兄ちゃん達が聞き入れない(この辺から既に妄想)
     ・業を煮やした弓使いがお兄ちゃん達を射落とす。
     ・かばわれまくりの末妹だけが空に残る。
     ・お兄ちゃん達がいなくなって哀しいけど、地上を照らすために健気に頑張る末妹。
     ・ドジッ子属性。
     ・太陽が昇る木の枝から落ちて、うんしょうんしょってよじ上るんでしょ。
     ・拍手コメいただいたので、追加
     ・のぼるのが間に合わないときは雨師のお兄ちゃんに「ごめんなさい間に合いませんでした、今日は雨にしてください」ってお願いするんでしょ。

     癸ちゃんちょうかわいいという結論だったような。

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    ピアニシシモは聞こえない

     久方ぶりに書きたい衝動。

    …………………………

    【ピアニシシモは聞こえない】

     雪の重なる呻きよりかけそい、ピアニシシモは聞こえない。
     無声のそらで上がった火柱より、幾億光年先にあった星の末期の叫びよりささやかなピアニシシモは聞こえない。
     薫る香りにかき消され、十センチメートルの距離に阻まれ、髪の一筋すら揺らせない、沈むピアニシシモの音色は届かない。
     一枚の紙すら通れない、〇.五センチメートルで漸う外耳を打つようなピアニシシモの声は聞こえない。
     そんな弱く小さな、吹けば風にまぎれてしまうピアニシシモは聞こえない。
     ピアニシシモは聞こえない。
     血の響きよりか弱いようなピアニシシモは聞こえない。
     鳴り響いて、届くはずがない。
     この腕の中からは、ピアニシシモは聞こえない。



    …………………………
     ひたすら文末表現を否定形にしてみた。
     それにつけても、取りたて助詞って便利だ。いや、「は~ない」が便利なのか。

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    ゆき

    書写。
    …………………………

     ぱしゃぱしゃと雪が沈む。ゴム底ほどの浅さの窪みと、境と靴を見下ろした。
     無数に刻まれたあしあとが、アスファルトの上に白波をたてている。ぱしゃんぱしゃんと水の皮膜を叩く音、街灯が落とす淡い影に、照り返して目の高さの宙は少し明るく、雪を含んで温かい風。
     合わせてみれば現実味が薄く、まるでくろく湿った夜闇の水面の上を歩いている心地さえしてくる。
     人が行き交う度に波色は変わり、車輪に逆らわず海は割れた。聖書の再来を幾重にも乗せた水面ははや飛空機雲の空に変じて、

    …………………………

    うわー書けなくなっている……。

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