なんだか頭が迷走しはじめたので息抜き。
こんな処方せんを出した白沢さん。
…………………………
【普段しないことをしてみよう】
位置についたら拳をあげて、そのまま跳ね上がってみる。片足着地、逆足踏切、そして着水、いち、に、さん。
「ぷは!」
「ぷぷはっふぃ!」
同時に浮かびあがってきて、まったく気の合わない動作で胸にため込んでいた息を解放した。
「いざ主様もっ」
期待の目を向けてくるふたりの名前はキラルとキルア、常磐宅の居候である。
「はいはい解ったやったげよう。白線に立って? 白丸のトコが左足足着陸位置で、そのあと黒丸のトコで右踏切でひねりを入れつつ跳びこめと。……最後にこれも聞いたげようか、キラキル」
「まとめないでくださいませんかね主様」
「失敬失敬ー。しっかり爽やかに流れている川だけれども、水深どのくらいかな?」
「キラルの腰ほどにございますよ」
「キルアの肘と手首のなかほどにございますよ」
「はーん、そう、腰、ってことは僕にとっちゃ腿より下かー」
所詮は川、怪我せずに跳びこめる深さではないのだった。せめて二メートルはほしい。軟体動物のごとき動きができるキラキルならまだしも、常磐は「とりあえず人間」の形を崩せないのだ。彼らほどの身体的な無茶が効かない。
キラルはもともと朔月の狸、変身能力が標準装備だとかずるすぎるだろう。先も水に落ちる一瞬に姿を揺らがせ、問題なく水の中に潜りこんでいる。
キルアの本性も似通ったものである。相方同様、頭の上に葉っぱを乗せて水面にダイブしていた。
「そこのキツネ。今すぐ九十八円で買えるカップ麺買ってきなさい。川からあがったら僕が食べるから」
「あかいのがいいですかー」
「みどりのがいいですかー」
「キルアはあかいのー」
「キラルはみどりのー」
「いっそ両方買って来ちゃいなさい! 二カップくらいいける!」
「んでは、主様。まずはよいやさっと。位置についてーよーい」
「インスターン!」
たん、とっ、ばしゃがつん!